18歳少女軟禁

[福岡少女軟禁]子供の障害案じる親の複雑な感情
 福岡市博多区の母親(40)が二女(18)を小中学校に通わせず、11年以上自宅に閉じ込めていた問題で、二女は幼児期に一時保育所に通っていたことが分かった。保育生活になじめず中途退所。二女への傷害容疑で母親を逮捕した博多署は、退所を契機に自宅で養育しようとしたとみている。「(障害による)発達の遅れが恥ずかしかった」と母親が挙げた理由は、行政や教育現場、地域社会にさまざまな課題を投げかけ、子供の障害を案じる親の複雑な感情も浮かび上がった。【米岡紘子、井上俊樹、取違剛】
■訴訟恐れ放置
 虐待の恐れがある場合、児童相談所は児童福祉法などに基づき家庭への立ち入り調査、児童の保護ができる。しかし、二女にはその措置は取られなかった。
 福岡市教委や学校、福岡市こども総合相談センター(児童相談所)は01年9月に二女への対応を協議、立ち入り調査も検討した。虐待があったと確認できず、調査に踏み込めなかった。同センターは「調査して虐待がなければ、訴えられる恐れもある」と釈明する。そして、センターは二女が中学卒業の年齢に達すると、完全に放置した。
 福岡県警幹部は「行政や学校、民生委員などが本当に連携していたのか」と不信感を隠さない。
■付き合いなし
 二女の家族は父母と姉、兄の5人。姉と兄は独立し、今は父母と3人で市営住宅に暮らしていた。近所付き合いはほとんどなく、同じ団地の住民は「(二女がいるのは)全く知らなかった」と口をそろえる。
 二女が小学3?4年時のころ、民生委員が訪問、母親から「ちゃんとやっているので問題ありません」と言われ、何も出来なかったという。住民の一人は「今回のような家庭を住民同士でフォローするのは無理で、行政や学校が積極的に働きかけないとだめだ」とつぶやいた。
■愛情あった?
 福岡市自閉症児者親の会の伊丹健次郎会長は、母親がドリルなどを買って読み書き、計算を教えていた点を挙げ、「二女への愛情はあったのでは」と思いやった。同会会員の中には、子供の障害を苦に無理心中を考えた人もいる。「母親が引っ込み思案だったのかもしれない。『障害も個性』と言える社会になれば、こんな悲惨なことも起きなかったのではないか」と伊丹会長は指摘する。
 二女のように、教師が一度も会えない児童生徒は福岡市には他にないという。それでも、福岡県教委が04年に実施した小中学生の不登校状況調査で、30日間の調査中に児童生徒に教師らが面会できなかったケースは14.1%に上る。このため、市教委は虐待の有無が不明でも立ち入り調査できるかどうかの検討を始めた。
2005年12月07日11時34分 毎日新聞 / 提供元一覧


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これは悲劇だ。この少女の具合的な障害などは全くわからないが、この記事を見る限り、いわゆる児童虐待事件と違って、親に対しても一定の同情は禁じえない。
幼い子供を持つ母親が、子供の健康診断などで発育の遅れなどを気にしている、ということを来たことがある。おそらくこの母親も同じ気持ちであっただろう。
この親が自宅で育てると決めたことは、子供の将来や社会的責任の面から、間違っていることは言うまでもない。
だが、「行政や学校、民生委員などが本当に連携していたのか」と福岡県警幹部が指摘するとおり、行政の側に大きな怠慢があった。
個々の親には間違いもある。ただ、それを社会と行政が、大事にならないうちに、軌道修正するというのが理想的である。
今回のこの件は、行政側が訴訟を恐れずに、適切に介入していれば、こんな大事にはならなかったはずだ。それが残念でならない。

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