造本の美学
古本と新刊書を両方あさっている身として、ここ数年感じるのは、造りのよくない本が増えたことだ。
特に紙質が落ちた。
子供のころに買ったコミックにはいまだに真っ白い紙のものがあるのに、わずか数年前に買った物はもう黄ばんでいる。
また、スピンの付いていない本も増えた。文庫本では、新潮文庫だけではなかろうか。
造本とは関係ないが、本の裏表紙には無粋なバーコードやISBNが印刷され、便利ではあるが美しさがなくなった。昔は価格表示だけだった。
もっとも、印刷の進化は目覚しい。
写植で活字が欠けて読めなくなるものはなくなったし、図版や写真なども、版の重なった本でも綺麗だ。
個人的にはソフトカバーのものではなく、やはりハードカバーこそ本といえると思う。しかも、
箱入・革装・天金・スピン付
初めて箱から取り出して本を開くとき、天金が「パリッ」と破ける音がする。これが至福の瞬間だ。
こんな豪華なものは例外だが、一般の本も、紙質とスピンは改善して欲しいと思う。
せっかく綺麗に印刷できるようになったのだから、もったいない。