通信販売のお話1
通信販売というと、昔は怪しげな感じがしてときめいたものだ。
少年誌の後ろのほうにあるモノクロページに、金属探知機とか、おっぱいの形をしたマッサージ器とか、ピラミッドパワーで野菜が長持ちするオブジェとか、西ドイツ製の強力歯磨き粉とか。
たいていは誇大広告で、うたい文句から想像されるほどのものではなく、書いてあることに間違いはないけれど、それでもちょっとがっかりなものが届く。
あるいは、男性誌のカラー広告ページには、運を呼び込んでお金持ちになってかわいい女性が群がってくるというおめでたい体験談つきの悪趣味な財布の広告が、消費者金融と包茎の手術の病院とテレクラの広告と並んで載っていたりする。
その辺の怪しい通信販売と一線を画すのが、ニッセンとか千趣会とかだったりしたわけだが、それでもやはり一部の人のためのものに過ぎなかった。
ラジオやテレビでの通信販売が一般的になってきたのは、やはり私が生まれて以降のことになると思う。
高校時代、夜中にテレコンなる外国のショッピング番組(吹き替えだが、当然買い物は日本で出来る)をよく見ていた。
今でもよく覚えているのが、車用のワックスの宣伝だ。スタジオにロールスロイスが出てきて
「ジョニー(うろ覚えにつき適当)、これは五千万もするロールスロイスだ!ここにワックスを塗って…」
で、ワックスを塗った後にオイルをこぼし、いきなり火をつける。
「ボブ!気でも狂ったのかい?五千万のロールスロイスが黒こげだ!」
とかいってると、コックの格好をしてフライパンを持った男が乱入、その炎で目玉焼きを作る。そして火は鎮火。
「ジョニー、心配いらないよ。まぁ見てて」
燃え上がって黒焦げになったところをスポンジで拭くと、当然のことながらそこはピカピカ。
「すごいよ、ボブ!!」
というやつ。
で、たいていの場合は、通常一本\6,980のところ、今回に限りもう一本と専用スポンジをつけて同じ価格で、と。
まぁ、そんな冗談みたいなのはともかく、さすがにテレビなどの公共電波にのせているだけあって、届く商品は意外にまともなものであった。販売方法は「ダイナミックキャンペーンで同じものをもうひとつ」とか「高枝切狭にコンパクトカメラをお付けして」とか怪しさ抜群だが。
インターネットの登場で、通信販売の性質が大幅に変わったと思う。
もちろん、既存の怪しさ抜群のものはそのままインターネットでもあるのだが、まともな業者も多くなったと思う。
それ以上に変わったのが、買う側の姿勢だ。
この項続く