『スタバではグランデを買え!』
珍しく面白い経済学の本だと思う。
われわれの日常に、経済は密接に関わっている。
食べ物の値段もそうだし、給与もそうだ。
生活には関係ないと思っている、金の価格や原油価格も、密接に関わっている。
原油価格が上がれば、ガソリン価格が上がるのはもちろんだが、マヨネーズの価格も納豆の価格も影響を受けるのだよ。よく考えてみれば、当たり前の話なのだが。
経済っていうのは、我々の生活そのものといっても過言ではないのに、経済学の本は素人には分かりにくいものが多い。
なんというか、理屈ばかりで実例に乏しかったり、現実が理屈に合わないと、現実のほうが間違っているなんて書く経済学者もいたり。
その点、本書は「これでもか!」というほど実例が出てくる。
目次より
はじめに 同じモノがちがう価格、ちがうモノが同じ価格
第1章 ペットボトルのお茶はコンビニとスーパーのどちらで買うべきか?
裁定と取引コストが価格差を縮めたり広げたりする同じモノがちがう価格で売られている理由は「取引コスト」
取引コストが存在しなければ、裁定が価格を等しくする
ライバル店は住宅街のどこに出店するか?
ライバルの主力商品や2大政党の政策が似てくるのはなぜか?
どんな店で日常の買い物をするか?
物流システムが支えるコンビニの便利さ第2章 テレビやデジカメの価格がだんだん安くなるのはなぜか?
規模の経済性が家電製品の価格を下げる薄型テレビの値下がり
ライバルの蹴落としと海外への販売拡大
販売においても規模の経済性が働く
ひとつで多機能は消費者の取引コストを節約する第3章 大ヒット映画のDVD価格がどんどん下がるのはなぜか?
企業は、高くても買う消費者にはできるだけ高く売ろうとする高くても買う客には高く、安くしか買わない客には安く売る
企業の平均コストと消費者の評価の間で価格は決まる
基本機能だけの製品では、企業はさほど儲からない
独占的な付加機能を武器に価格差別をおこなう第4章 携帯電話の料金はなぜ、やたらに複雑なのか?
携帯電話会社はいろいろな方法で消費者を選別する異なるタイプの消費者には、異なる料金プランを用意
代わりの方法がない人は高い料金を請求される
複雑さに屈する消費者は、価格差別の餌食になる第5章 スターバックスではどのサイズのコーヒーを買うべきか?
取引コストの節約は、店と消費者の両方に利益をもたらす価格差はどれでも100円
カフェ経営者のコスト計算
Wサイズは店も客も得
ITビジネスは取引コストの節約がポイント第6章 100円ショップの安さの秘密は何か?
ときには、追加コストが価格を決める野菜ジュースの価格を付加価値に分解する
100円ショップの安さの秘密
中国の義烏市は日用雑貨の世界的な供給拠点
平均コストよりも、追加コストのほうが大切なときがある
100円ショップで原価を気にする消費者は、じつは賢くない第7章 経済格差が、現実にはなかなか是正できないのはなぜか?
所得よりも資産の格差のほうが大きな問題である所得格差より資産格差のほうが問題だが、解決は容易ではない
自分の能力をきちんと把握していれば、いくらでも仕事はある
他人の努力をいつも観察することはむずかしい
容姿や資格だけを売り物にして得られる仕事では、さほど稼げない第8章 子供の医療費の無料化は、本当に子育て支援になるか?
安易に政府に頼る国民は、結局は大きなツケを負わされる赤字が続く公共事業をどうするか?
子供の医療費の無料化が不公平を助長する終章 身近な話題のケース・スタディ
付加価値に分解して考える《1》 意外にも、日本が石油製品の輸出を増やしているのはなぜか?
《2》 牛肉を、ステーキ店と焼肉屋のどちらで食べるか?
《3》 家具の組み立てと運送は、どちらを先にすべきか?
《4》 子供を持つ親が喜ぶサービスとは?
《5》 携帯電話料金の話【Part 2】
《6》 アジア製の安い邦楽CDは、本当に日本の音楽文化の敵だったのか?おわりに 他人と同じだから得なこと、ちがうから得なこ
目次を見ているだけでも、実例豊富なことはお分かりいただけると思う。
まぁ、マクロからミクロまで良く取り揃えたもんだと感心しきり。
例は身近で、図解も多いし、妙な数式をこねくり回すこともなく、素人に非常に分かりやすい。
感心したのは第7章で、その中でも「自分の能力をきちんと把握していれば、いくらでも仕事はある」は特に読む価値あり。
つまり、能力の低い人間でも、キチンと自分の能力を把握すれば、仕事はあるということ。
なんか、自信がつくね、これは。
この本の真髄は「おわりに」にある。
大切なのは、現時点の自分自身について、どんな面では大衆(平均)的な好み・能力・行動パターンを持っているのか、どんな面では少数派なのかを自覚することです。そういった意味での自己分析(自己評価)が正確であるほど、上手に生活できます。
自己分析を正確に行えば、今までより少しだけ、今の生活が楽しく、そしてお得になるかもしれない。
ま、何にしても社会の仕組みは知っておいて損はないな、と思わせられた一冊だった。
☆☆☆☆☆
本日のお買い物
亀井勝一郎『大和古寺風物誌』
中学生以来だよ、この本を手に取ったのは。
コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの事件簿』
ちなみに、僕は喫茶店にはよく行くが、スタバにはほとんど入ったことがない。
別に敷居が高いというわけではなく、僕が喫茶店に行く理由となっていることが、ここではできないから。
それだから逆に、女性には受けるんだろうね。