新・嗚呼無情 ある盗賊団首領の嘆き 再び
「この世とは無情よのう。」
「またですか。」
「またとは何だ。」
「いやまあ、いつもいつもよく続くと。」
「この世が無情である限り、
「そのたんびに私は聞かされるわけですか。」
「いやか。」
「いやです。」
「つれないのう。しかしこれが理解できんでは盗賊にはなれない。」
「盗賊ったって、何にもしてないじゃないですか。」
「それはこの世が無情だからよ。盗みをしたって得るものは金ばかりで真の意味での実りはない。」
「夢がないですな。」
「小学生のときにはあったな、金持ちの総理大臣になりたかった。」
「じゃあなりましょうよ。」
「そこがそうはいかんのよ。大学でてインテリゲンチャになると、そのような夢はまったく空虚だということに気づく。」
「左様ですか。」
「左様よ、おまえにはわからんか。」
「中卒なのでわかりません。」
「よくそれで副首領になれたな。」
「なれたというよりなるひとがいなかったんですな、あとのみんなは小中卒か中退で。」
「義務教育を中退?」
「中学校中退が2人、小学校中退が1人です。」
「ほかのやつはおらんのか、もっと学歴のあるやつが。」
「みんなほかの盗賊団に転職しました。」
「おまえはどうして残った?」
「転職しようと思ったんですけどね、○○盗賊団からきましたっていったら、面接さえしてもらえませんでしたよ。ほかの連中は大卒だから転職できたんでしょうがね。」
「見ろ、世の中無情よ。しかし考え様によっては小学校中退というのは強いかも知れん。世の中にあわないから中退したのだろう、わしと似たような境遇だな。」
「いや、家の関係で外国に行っていたそうです。日本の教育はまずいといって。」
「すると英語ぺらぺらの国際派か。」
「いや、びんたぼ語らしいです。」
「なんじゃ、そりゃ?」
「中国かアフリカの少数民族かなんかの言葉なんじゃないですか。」
「それじゃ役にたたんではないか。あ、コーヒーがなくなった。おかわりを持ってこい。」
「今切れてます。」
「だったらどっかからかっぱらってこい。」
「しかし、一般のスーパーからかっぱらうのは反民衆的だから止めろといっていたではないですか。」
「そうだな、なら○島珈琲株式会社からかっぱらってこい。大会社だから一向に構わん。U○Cだぞ、ウッシッシじゃないんだ、これは恩師の川合先生が口を酸っぱくしてゆっとったことだ。」
「へい、おい部下1よ、来い。 上○珈琲株式会社からコーヒーをかっぱらってこい。」
部下1「おぴょぴょぴゅ#ぴゅ、ふぁれふぃふぉ*/。」
首領「何だこいつは。」
副首領「例のびんたぼ語のしゃべれる部下です。」
首領「これがびんたぼ語か。」
部下1「あび@ゃびゃ¥。」
首領「これはただの馬鹿ではないのか。」
部下1「#ぴゅ、ふぁれふぃふぉ*/。ぴっぽぽぽー<。」
副首領「そうとも言うかもしれません。」
首領「うーん、無情よ。」
初出「探書手帳21」(1998/2)