第2回 なぜクレジットカードと電子マネーなのか
現金の代替決済手段は、たとえばクーポン券のようなものでも良いし、回数券・商品券もあてはまるだろう。
ただ、それが現金とほとんど変わらない形態のものであったら、かかるリスクも現金とかわらず、事業者にしてみれば換金しなければならないわけだから、余分に手間のかかることである。
キャッシュレス生活の手段として最も適切なのは、電子的な決済方法だ。具体的には、
- プリペイドカード
- クレジットカード
- 電子マネー
- デビットカード
である。
この中では、プリペイドカードが最もハードルが低い。ただし、現実的には支払先が多くなく、汎用のものとしては大きく普及するには至らなかった。
次ぎに、デビットカードもハードルが低い決済手段といえる。
クレジットカードの場合与信が必要で、一定以上の資産や収入がない人の場合、作れない場合がある。
電子マネーは誰でも持つことができるが、クレジットと連動して与信が必要であったり、プリペイド式であってもわざわざ導入しなければならないという障壁はある。
その点、デビットカードであるジェイデビットであれば、銀行のキャッシュカードがあれば利用できるから、消費者にとっての障壁は大変に低い。
しかも、クレジットカード用のCAT端末を流用するため、加盟店数はそこそこ多い。
ところがこのジェイデビットには大きな落とし穴がある。金融機関とオンラインで結べない時間帯は使用できず、その時間も金融機関ごとにまちまちなのだ。
だから、深夜のタクシーの支払いなどに支障が出る。
それに、不正利用された場合の補償が全くないのも痛い。
そして最も大きなデメリットは、ジェイデビットを使用しても何らポイントなどの優遇措置がないことである。
与信という障壁さえ乗り越えることができれば、クレジットカードは非常に魅力的な代替決済手段である。
実は、上記にあげた決済手段の中で、最も普及しているのがクレジットカードなのだ。
クレジットカード会社の努力のたまものといえるのだが、使える店舗の数が、他の決済手段に比べて格段に多い。
特に高額の決済の伴うことの多い店舗では、必ず使えると言っても過言ではない。
最近ではコンビニチェーンやスーパーでも使えることが多く、ネット通販ではクレジットカード対応はほぼ必須であるといっても良い。
海外旅行では必須と言われており、円建てであろうがユーロ建てであろうが、関係なく決済できる。
クレジットカードの特徴は、元々は、特殊な装置が必要ないこと、オンラインである必要性が無かったことである。
今でこそCAT端末がオンラインでつながっているが、元々はインプリンタを使用して、複写式伝票にカードのエンボスを写し取って決済していた。
クレジットカードにはカード番号や有効期限、会員氏名が凹凸によって刻印されているのだが、それがないと複写式伝票が使えないのだ。
電子決済がメインとなった現在でも、カードからエンボスがなかなか消えないのは、電子化が立ち後れた地域でもクレジット決済ができるようにするためである。
普及に当たって、特殊装置が必要なかったことは、大きなメリットだっただろう。
後年不正使用対策などのためにCAT端末が出てくるが、電話回線につながれば使用できるものであった。
これだけ普及したクレジットカード最大の障壁は、「信用」である。
金銭的な信用のない者には簡単にはカードは発行してくれない。だから、学生や専業主婦がクレジットカードを作ろうと思ったら、信用のある人からの連帯保証を求められる。
この「信用」というのがくせ者で、その実態は何かというと、メインはクレジットヒストリーの照会だったりする。
クレジットカードを持っていない者がクレジットヒストリーなど蓄積しているはずもなく、誰かから連帯保証を得られない限りクレジットカードを作れないことになる。
実際には、クレジットヒストリーだけではなく、資産状況であったり、会社員などの場合は勤務先に在籍することが確認できれば、その勤務先の信用でカードが発行される。
機会があれば詳しくふれようかと思うが、クレジットヒストリーの蓄積が社会生活を営む上で、不利な扱いを受けないために必須になる未来が近づいてきている。
「クレジットヒストリー」=「その人の客観的な信用力」と言う、新たな物差しである。これを重視する社会になった場合、クレジットヒストリーをきちんと築けなかった人は、宿泊施設の予約を断られたり、就職できなかったりするようになるだろう。
クレジットカードへは加入障壁がある者の、一度発行されてしまえば使えるお店は多く便利である。
ところが残念なことに、クレジットカードは少額決済に決定的に不向きなのだ。
一般ユーザ側から見た場合、少額のシーンでは現金決済に比べてカード決済の方が会計にかかる時間が長い。
100万円の商品を現金で買う場合
まず店員にオーダーをして会計処理を行ってもらう。「100万円です」と言われたので、手持ちの紙幣から1万円札を100枚数えて渡す。店員はまた同じように100枚数えて、レジに入れる。以上。
100万円の商品をICクレジットカードで買う場合
まず店員にオーダーをして会計処理を行ってもらう。「100万円です」と言われたので、「一括払いで」といいながらクレジットカードをカードICカードリーダにカードを差し込み、暗証番号をおす。しばらくするとレシートが出てくる。以上。
100万円の買い物の場合、ほとんどの場合クレジットカードの方が早い。ところが、これが100円の買い物だったらどうだろう。紙幣を数える時間がない以上、確実に現金の方が早い。
加盟店側から見た場合、取引ごとに加盟店手数料がかかってしまうため、クレジットカードは少額ではなるべく使って欲しくないという事情がある。
だから最近では少ないが、2000円以下のお会計ではカードは使えません、などと堂々と加盟店規約に違反する表示をするところもあったりしたのだ。
さて、それぞれの決済方法のメリット・デメリットを見てきた。残りは電子マネーということになるが、実はこれだけは、他の決済方法と同列には論じられない。
電子マネーというのは電子決済のことであって、電子決済であればプリペイドであろうがクレジットであろうが、内容は問わないのだ。
「電子マネー」といわれて思い浮かぶブランドは何か、と問われればいろいろ答えはあるだろうが、どんなブランドであれ現状では大きく分けて二つの種類しかない。
一つは先払い方式の電子マネーであり、もう一つは後払い方式の電子マネーである。
先払い方式とは、言い換えればチャージが必要な電子マネーで、代表的なものに「Edy」「Suica」「nanaco」「WAON」などがある。
後払い方式とは実はほとんどの場合クレジットカードそのもので、代表的なものとしては「iD」「Quickpay」「VisaTouch」などがある。
ク
レジットカードでないものとしては、「PiTaPa」が有名だが、与信が必要なことはクレジットカードと同じである。
現在の電子マネーとは、プリペイドカードやクレジットカードをICカードベースに切り替え、決済速度などの利便性を高めたものなのだ。
たとえばプリペイドカードとしては、カードを使い切って新たなカードを購入する必要はなくなり、チャージは現金でもクレジットカードでもできるようになった。
クレジットカードとしては、少額の場合かざすだけで決済可能になった。
日本国内において、電子マネーのベースとして最も普及しているICカードは、ソニーの開発したFeliCaである。
ICカードは複数の機能を一枚のカードにもたせることができる。特にFeliCaの場合、おサイフケータイにも採用されているため、やろうと思えば「Edy」「Suica」「nanaco」「Quickpay」「VisaTouch」「iD」を一つのケータイに同居可能だ。この上、マツキヨやビックカメラのポイントカード機能も持たせることができる。
電子マネーはこのような利便性から、ここ数年で急激に多くの交通事業者や小売業に採用された。その中身はいろいろなブランドに分かれてしまっているが、相互利用ができるようになったり、一つの端末で複数の電子マネーに対応させたりしてきているので、おそらく大きな混乱は今後もないだろう。
このように「汎用性」と言う面で、クレジットカードや電子マネーは他の決済手段より非常に優れている。
電子マネーはその特性から、今後はクレジットカードを飲み込んでしまうだろう。だが「クレジット」というシステムと「現金」と言うシステムが、同じ「電子マネー」というインフラに乗っかっているだけで、決して「信用を与える」というクレジットのシステムが消えてしまうわけではない。
だから、現金の代替手段はクレジットカードと電子マネーなのである。
21日の初回公開では、なぜかエントリーの後半部分が抜け落ちてしまった。
改めて後半部分を追加した。