10より11
普段使う文房具は、キチンとしたものを使いたい。
だからボールペンは、グリップのしっかりしたもの、書き味の滑らかなものを選ぶ。
カッターだって、ロックのしっかりかかるもの、切れ味が良くて錆びにくい刃のものを選ぶ。
テープも腐食しにくいものを選ぶ。
付箋紙も、良いものを選ばないと粘着材が剥離してくれなくなる。
文房具を選ぶポイントはいくつかある。
値段も大きな要素だがそれ以上に、安全性と利便性が求められる。
安全性は当然で、品質の悪いはさみやカッターは怪我の元である。
文房具で言う利便性とは、使っていてストレスを感じないこと、と言うのが大きいような気がする。
たとえば話題になったコクヨのカドケシ。
形とアイディアに注目が行きがちだが、これは普通の消しゴムが消しにくいという、ストレスを軽減するものである。
修正テープは、修正液の乾燥時間を省略できたし、塗りむらが出来てしまうことも解決した。
ゲルインクボールペンは、粘度が高くてにじみが少ないがインクの乾燥して固まりやすい油性インクボールペンと、粘度が低くて書き味が柔らかく発色も良いが、キャップが必須で水濡れに弱い水性インクボールペンの良いとこ取りをしたボールペンである。
そんな風に、意外に発展著しい文房具の世界はなかなか楽しい。
そんな中、僕が最近買ったのがMAXのVaimo11というホッチキス。
これまで使っていたのはMAXのフラントクリンチタイプのHD-10DFLというホッチキス。
これの特徴は、従来20枚しか綴じられなかったものを、26枚にアップしていること。
さらに、綴じる力を3割減としたこと。
そして、綴じた針が平らになるフラットクリンチであること。
本体が少しだけ重たいのだが、綴じる力がものすごく軽く、しかもフラットクリンチだから重ねてもかさばらない。
このあと、後継で「サクリフラット」という、綴じる力を半分にしたものまで出た。
この辺が、10号針を使ったホッチキスの完成型と言えるだろう。
その10号針から一歩踏み出したのが、新規格の11号針を使ったVaimo11だ。
HD-10シリーズよりもやや大きめ。
11号針とは、10号針より2ミリ幅広で、1ミリ長い針。
そしてこのホッチキスの最大の特徴は、なんと40枚綴じられる!
それが具体的にどのくらい凄いかというと、その枚数は3号U針の10ミリ足の針を使う、中型ホッチキスの領域なのである。
写真下はなぜかうちにある130枚綴じ対応の大型ホッチキスだが、中型はこれよりも一回り小さい程度。
(なぜ大型のホッチキスが家にあるかは秘密。実は中型のホッチキスもあったが、大は小を兼ねることが出来たので処分した。中型・大型は冗談で買ったのではなく、昔本当に必要だった。)
とてもじゃないが、普通のホッチキスより少し大きい程度のVaimo11とは比較にならない。
驚くのはその綴じる力の軽さ。
40枚綴じても、他社製のホッチキスで数枚綴じるよりも圧倒的に軽い。
針がすっと紙に中に入っていく感じ。
驚くべき点は他にもある。
このデザイン、指が挟まるような隙間が全くない。
他社製のホッチキスで綴じるとき、指の肉を挟んでいたい思いをしたことがあるが、このホッチキスの設計ではそういったことはなさそう。
お尻についているリムーバもおまけ程度ではなく、上から針を押さえる構造になっているから、針が非常に外しやすい出来の良いものだ。
そして40枚も綴じられるパワーがあり、しかもフラットクリンチタイプなのに、非常に音と振動が静か。
さて、僕は史上最強のホッチキスだと思うのだが、ウィークポイントは消耗品の針だ。
11号は今のところこのホッチキスだけしか対応しない。
ほとんどの小型ホッチキスは10号針仕様だからだ。
今のところ11号はコンビニでは売っていない。
ものすごく良い製品なのだが、11号針の入手が難しいままだと、普及しないであろう。
Vaimo11はホッチキスとしては恐ろしいほどに精度が高く、他社は参入出来ないかもしれない。
そもそも10号針でも、HD-10シリーズのように、綴じる力が軽かったり、綴じる枚数が多かったり、フラットクリンチであったりと、工業品として高い精度を要求されるホッチキスは、他社ではあまり見ることが出来ない。
11号針を使っても、10号針とあまり変わらない程度の製品しか出せないようであれば、全く意味はないのだ。