47氏、逆転無罪
Winnyの開発者が、高裁で逆転無罪になったそうだ。
「有罪なら萎縮」訴え実る…ウィニー開発逆転無罪
違法コピー後絶たず、専門家から懸念の声も「被告人は無罪」。ファイル共有ソフト「Winny(ウィニー)」を巡る著作権法違反ほう助事件で、大阪高裁は8日、1審・京都地裁で有罪判決を受けた元東京大大学院助手金子勇被告(39)に逆転無罪判決を言い渡した。「有罪になれば、開発者を萎縮(いしゅく)させてしまう」と、一貫して無罪を主張してきた金子被告。小倉正三裁判長が主文を告げた瞬間、深々と頭を下げた。一方、専門家からは「判決は同種ソフトを使った著作権侵害を助長するのではないか」と懸念の声も上がった。
大阪高裁201号法廷での判決言い渡し後、金子被告は弁護団のメンバーと握手を交わした。その後、大阪司法記者クラブで記者会見に臨み、「正当な判断。よかったと思います」と語った。さらに「1審判決では、何をすればほう助罪に問われるのかわからなかった。今回の判決は、他の技術者にもいい影響があるのではないか」と続けた。
ただ、ネット社会で依然として著作権侵害が横行していることに触れ、「どう使うかはユーザーの自由だが、ユーザーはちゃんと使ってほしい」と話した。
金子被告は1審公判中の2004年12月、東京大を退職。ウィニーの技術を応用したコンテンツ配信事業を行うIT会社で技術顧問を務める。今ではウィニーを開発したときのように趣味で無料ソフトを作ることもないといい、判決前には「面白い発想が浮かぶこともあるが、捜査で萎縮し、動けない」と話していた。
ウィニーの利用者数は、金子被告が1審・京都地裁で有罪判決を受けて以降、減少している。ネットセキュリティー会社「ネットエージェント」(東京)によると、2006年に約53万人だったウィニー利用者は、今年9月には約30万人に減った。しかし、同種ソフト「Share(シェア)」などの利用者が増え、全国で約50万人とされるファイル共有ソフトの利用者数に大きな変化はないという。
コンピュータソフトウェア著作権協会(東京、ACCS)は、06年にウィニーによる著作権侵害で生じた経済的被害を推計したことがある。それによると、調査した6時間だけでも約100億円に上ったという。
事件後もウィニーなど同種ソフトを使った映画やゲームの違法コピーは後を絶たず、著作権が脅かされる状況は続いている。このため、ACCSと通信業者など9団体は昨年5月、対策協議会を設立し、違法利用者に直接、警告メールを送付することを検討中だ。
来年1月には、違法ファイルと知ったうえでダウンロードすることを禁じた改正著作権法も施行される。しかし、警告メールに法的強制力はなく、改正法には罰則がないなど、専門家らの間では「これらの動きで一定の抑止効果はあるが、問題の根本解決には時間がかかる」との見方が強い。
(2009年10月8日 読売新聞)
この話でよくあるたとえに「包丁の製作者は、包丁が殺人に使われても、罪に問われることはない」というものがある。
一見、納得してしまいそうなたとえなのだが、大きなごまかしがある。
包丁の製作者が、表向きは調理用としながら、裏向きには殺人に都合の良い改良などを加えているとしたら、このたとえの前提は全く成立しないことになる。
一番悪いのは悪用する人間であって、包丁やソフトではない。
包丁の製作者や金子氏が、「悪用するために作ったものではない」と主張し、悪用のための意図を検察が証明できないのなら、やはり無罪が妥当である。
でも僕には、金子氏に悪意(あるいは悪用されることを黙認する考え)があったとしか思えないんだよな。
基本的にこういった問題は、技術そのものと、開発者の意図・動機とは分けて考えるべきで、この裁判で問題にされているのはWinny(技術)そのものではなく、後者なのだ。
もともと、2ちゃんねるのダウンロードソフト板は、違法なファイル交換の話題で持ちきり。
その板からWinnyが出てきたと言えるわけだから、前後の話題と無関係と考える方がおかしい。
ア 平成14年8月21日,被告人の姉から被告人に対し「勇ちゃんが,軽く作ってみたものが,これだけ話題になるなんてやっぱり,勇ちゃんてすごいのね,と感心してます。あとは,ぬかりなく気をつけてね。法律上とか,著作権とか,自分の職場とか,これから先のこととか,健康の事とか。活躍を期待してます。」などという内容のメールが送信された。これに対する返信として,同月23日,被告人は姉に対し「とりあえず何か一般に広まるソフトを作るというのだけは決まってるけど何やるかは決まってないし,といってすぐ広まるようなもんは,たいてい悪用が効くようなものに決まってるということで,これは予備みたいなもんかな。まあ,何やったらまずいかは良く把握してるんで(おかげで最近は著作権法とかに詳しくなったけど)気は付けてます。作るだけならぜんぜん問題ないんだけど作者が悪用できることを明らかに宣伝するとまずいはず。その辺は抜かりないはず。とりあえず公に作者だとしてあまり名前出せないようなもん作っていても仕方ないんだけど,悪貨は良貨を駆逐するってのはいつの時代でもそうで悪用できるようなソフトは特に宣伝しないでも簡単に広まるね。もう少し名前出しやすい方向への応用は考えてるんでそっちも期待だけど,そちらは表に出てくるのがちと時間かかりそう。」などという内容のメールを送信した。 また,同年9月10日,被告人は姉に対して「とりあえずWinnyの方はこちらの想定以上に大事になってますが,(WinMXという今まででのデファクトソフトが使えなくなったので人が移動してきている)こちらはソフト作っているだけなので警察沙汰にはならないと思います。作者なので自由に手を入れられるのでテストの時は絶対に外にファイルをUPしたりしないようにしてるし(現行法律下ではファイルを無差別に他の人に渡すと著作権その他で問題がでる)。ソフト作者が逮捕された例としては唯一FLMASKという,画像ファイルにモザイクかけるソフトの作者が逮捕された例がありますが,これは作者が他画像へのリンクを張っていたためでした。とりあえず技術とそれを何に使うかは別で,大規模なファイル共有技術というのはいろいろと応用が効くし,次世代コンピューティングで基盤となる重要な技術なので,この辺のノウハウを握っているのは何
かと重要だと思ってます。」などという内容のメールを送信した。
平16(わ)第726号 京都地方裁判所 第3刑事部 著作権法違反幇助被告事件 平18年12月13日判決「3 証拠により認められる事実 (3)被告人と関係者間のメール送受信の状況等」より
なかなか衝撃的な内容。
僕には悪意(あるいは悪用されることを黙認する考え)があるように思える。
それが著作権法違反の幇助に問えるのかどうかはわからないけど、少なくとも金子氏が「真っ白」ではないということは言えると思う。
この記事でもう一つ気になるのは、ACCSの調査。
6時間の調査時間だけで、100億円の経済的損失が確認できたとか言うばからしい結果。
流れていたソフトの数とその定価を掛けたらそんな金額が出るかもしれないけど、そんな数字はウソ。
経済的損失とは、Winnyが無かった場合にコンテンツが生み出す売り上げと、実際のコンテンツの売り上げの差額のはず。
6時間で100億が本当なら、年間約15兆円の損失。
って、どれだけ大きい業界なんだよ。