アポロ13
「アポロ13」は1995年に、実際に映画館で見た映画である。
大変すばらしい作品であったため、DVDを購入しようと思っていたのだが、何故か買いそびれていた。
先日、Blu-rayで発売されたので、やっと購入した。
ほぼ10年越しである。
この映画の内容がすばらしいのはもちろんだが、その映像に感心した。
試写会でNASAの人から、「こんな映像どこにあったんだ?」と言われたというエピソードまであるようだ。
実際にはあり得ないアングルの映像ばかりであり、よく考えれば作られた映像であることはわかるのだが、実際にこの出来事に関わったNASAの関係者ですら本物と思うほどに、リアルな映像なのだ。
この映画を見た年の秋に、NHKスペシャルで「新・電子立国」というシリーズを放送した。
「電子立国 日本の自叙伝」の続編で、コンピュータのソフトウェアの開発に焦点を当てたドキュメンタリーの傑作であった。
この第1回が「驚異の画像 ハリウッドのデジタル技術」というテーマで、なんと「アポロ13」の制作過程を取り上げて、コンピュータによる映像作成を紹介したものであった。
映画のメイキングでもここまで掘り下げることは滅多になく、コンピュータというものに関心が高い僕にとって、非常に印象が深い作品となった。
さて、今回改めてBlu-rayで見たわけだが、やはり画質がきれいだ。
画質というのは映画の本質ではないけれど、やはり元の映画に近い高画質の方が気持ちがよい。
この映画は言わずとしれた、アポロ13号の事故をテーマにした物であり、内容はおおむね事実に沿っている。
印象的だったのが、マスコミについてだ。
アポロ13号は月面着陸を目指したものであったが、11号/12号と続き3度目であったため、世間の関心が薄かった。
だから船内からの生中継も、どこの局も放送しなかったのだ。
事故直後ラベル夫人にマスコミが「中継のために家の敷地にアンテナを立てて良いか」という許可を求めてくるのだが、「うまくいっているときは報道しないのに、事故の時だけ注目する」と言うような意味のことを言って怒り、許可を出さない。
「ここは夫の家であり、夫の許可なしにはだれも入れません。アンテナのことは主人に許可をもらってください、次の金曜日には帰ってきますから」
圧巻の台詞だ。
事実に沿った話であり有名な出来事だから、映画の結末は誰でも知っている。
でも、それを手に汗握るハラハラドキドキの物語として語れるロン・ハワード監督はすばらしい。
特に注目すべきはそのカメラワークだ。
ロケットの打ち上げシーンはあり得ないカメラ位置なのだが、その視点からでないと「本当らしさ」は感じられないだろう。あり得ない動きこそ必然なのだ。
管制センターのシーンでも、あえてカットを割らずに一つの画面で収めているシーンがあるし、船内の状況を的確に捉えたカメラの動きなど、非常に見せ方に長けた監督だと言うことを感じさせる。
役者の演技については申し分ないが、特に印象深いのは主席飛行管制官ジーン・クランツ役のエド・ハリスだ。
この主席飛行管制官はこの物語のもう一人の主役と言ってもいい。彼がいなければ、おそらくこのミッションの結末は「死」であっただろう。
かかる重圧と卓越した指揮を演じたエド・ハリスは、この年の助演男優賞に輝いてもおかしくないできだったと思う。
☆☆☆☆★