007 ドクター・ノオ

1962年(日本は1963年)公開の007シリーズ第1作。
日本初公開時の邦題は「007は殺しの番号」。

さて、僕の大好きな007シリーズの記念すべき第1作である。
僕が好きな映画の条件の一つは非常にシンプルで、痛快であること。
その痛快さに於いてこのシリーズは最高峰である。

007映画のお決まりを振り返ろう。

まずは構成
・ガンバレル(銃口がボンドを狙って返り討ちに遭う)
・オープニングアクション(アクションシーン)
・オープニング(テーマ曲と独特の映像)
・本編
・エンドクレジットで”James Bond Will Return”

本編では、誇大妄想狂な敵、不死身の敵、自己紹介が”Bond, James Bond”、飲み物は”Vodka Martini, Shaken, not stirred”(ウォッカ・マティーニ、ステアではなくシェイクで)、秘密兵器、ボンドガール、マネーペニーとのやり取り、といったところか。

もし最近の007映画を観ているならば、本作を見る時はこう言った「お決まり」がどうなっているかを注意して見ると楽しい。
お決まりがなかったり、「最初はこんな感じだったのか」とビックリする事請け合い。

イアン・フレミングの原作に漂うのはある種のマッチョイズムである。
ボンドは上等なスーツを着こなし、高級車を乗り回し、美人と寝て、酒にもギャンブルにも詳しく、スポーツ万能。フェミニズムが勃興し始めた頃に、それを嫌う世の男性たちに支持された。

映画シリーズも初期のものはこの傾向が色濃く出ている。
女性の扱い方をみるととても分かりやすい。
美人は沢山出てくるが、利口な女性は全く出て来ない。
上司のMが女性だった最近の007シリーズとは全く違う。
シリーズ全体を通して、女性の扱い方がどのように変わるのかをみてゆくのも面白いだろう。

さて本作の見どころだが、まずは音楽。
有名なジェームズ・ボンドのテーマが出てくるのはもちろん、オープニングから本編へ繋がる曲や、店でバンドが弾いている曲などとても聴き応えがある。

次にボンドガール。
ウルスラ・アンドレス演じるハニー・ライダーが白いビキニ姿で海から砂浜に上がってくるシーンは、007シリーズで最もセクシーなボンドガール登場シーンであると言っても良い。

そしてケン・アダムの美術。
デント教授がドクター・ノオに報告するシーンで出てくるドクター・ノオの基地内のセットは特に素晴らしい。
ケン・アダムの独創的なデザインと壮大さが、007シリーズに与えた影響は大きい。

ドクター・ノオ役はジョセフ。ワイズマン。彼は白人だが東洋人風にメイクアップされている。多分、今では禁忌だろう。彼の独特の演技は、初期の007シリーズの悪役のイメージの基礎になっている。

とにかく、痛快な映画。
☆☆☆☆★

少しだけ余談を。
ウルスラ・アンドレスは007の番外編で世にも奇妙な「カジノ・ロワイヤル」に出演している。
ドクター・ノオの基地内にゴヤの『ウェリントン公爵の肖像』という絵が飾られているが、これは映画公開当時盗難に遭って行方不明だったもの。ドクター・ノオが盗んだのか、誰かが盗んだ物を買ったのか。
ボンドはスーツを仕立てたのはどこかと問われ、サヴィル・ロウと答えている。これは「キングスマン」の設定の元ネタになっている。

画像引用元 映画.com

無學童子
007映画・音楽・TV評価付記事

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