海底二万哩
1954年のアメリカ映画。
言わずとしれたジュール・ヴェルヌの名作古典SF小説『海底二万里』をディズニーが映画化した作品。
原作が1870年という時代を考えれば、なんとも飛び抜けた作品である。
ヴェルヌの描いたノーチラス号は、ある意味では現在の最新鋭艦並みの能力を持っており、その想像力には驚嘆するほかない。
完全な電気式と言うことを考えれば、現在の原子力潜水艦よりも優れた静寂性を備えているに違いない。
近代以降の潜水艦映画の魅力と言えば、その隠密性と盲目性、そして立体的な考え方なのではと僕は思う。
通常の海戦は平面であるのに対し、潜水艦は深度の概念があるので立体的であり、洋上艦からは容易に補足されない隠密性もある。
その隠密性を保つためにほとんどレーダーは使えずソナーが頼りという足枷がある。
そういう強みと弱点が、潜水艦映画を面白くしている。
そのような観点で見ると、この映画には近代の潜水艦映画の魅力は全くない。単純に、洋上艦から見えにくいだけである。
この映画の公開された1954年と言えば既に原子力潜水艦は就航し(しかも名前はノーチラス号!)、核兵器も存在する。
つまり、原作で描かれている科学技術は既にほとんど実現しており、ビックリするようなことでは無くなっているのだ。
そしてそれが現在ならなおのこと。
それでもこの作品が今以て面白いのは、やはり普遍的な「人間」という物を描いたからであろう。
アロナクス教授とネモ艦長、コンセイユとネッド、アロナクス教授とコンセイユ、ネモ艦長とコンセイユとネッドの関係などだ。
人間というものが描けているからこそ、この作品は陳腐にならないのだ。
☆☆☆★★
褒めたたえた割に辛いのは、やや冗長なのと原作にある要素がかなり落ちているため。
ネッド役のカーク・ダグラス、すでに過去の人という認識が強かったのだけれど、102歳でご健在。
ネモ艦長役のジェームズ・メイソンはイングランド出身で、インド人には全く見えない。
映画を観た翌日ディズニーシーに行ったが、諸事情によりアトラクションの海底2万マイルには乗れず残念。
この映画はリメイクが企画されては立ち消えになるが、恐らく名作過ぎるからだろう。
画像引用元 Amazon.co.jp