家電製品の選び方 5 加湿器(2021)
そろそろ空気の乾燥が気になる季節である。
湿度が低いと風邪の菌も増殖しやすいし、肌にも良くない。だから室内をある程度の状態に加湿することは非常に重要である。
また、長く続くコロナ禍にあって、ウイルス対策も気になる点である。
最近の住宅は24時間換気が義務付けられている。
冬に何もせずに放置しておくとどんどん乾燥が進むし、暖房を入れればなおさらであるから、やはり加湿器は必須の物と言える。
加湿方式
加湿器には大きく分けて4つの方式がある。
- 加熱式(スチームファン式)
- 超音波式
- 気化式(ヒーターレスファン式)
- 加熱気化式(ハイブリッド式)
ちなみに、「ハイブリッド式」とは二つの加湿方式を組み合わせているという意味。加熱式と気化式を組み合わせたものが多いが、加熱式と超音波式を組み合わせたものなどもある。
加湿方式別メリット&デメリット
加熱式
原理 ヒーターで水を加熱して水蒸気を発生させる仕組み。ストーブの上にやかんを置いてお湯を沸かすのと原理は同じ。
メリット 加湿能力が高い。加熱するので衛生的。
デメリット 熱を持つために危険。結露しやすい。消費電力が大きい。
超音波式
原理 水を超音波で微細に粉砕して噴霧する方式。
メリット 消費電力が小さい。加湿能力が高い。発熱しない。アロマディフューザーや、薬剤の噴霧に使える。
デメリット 不衛生な水もそのまま噴霧するため危険。結露しやすい。
気化式
原理 水の浸透したフィルターにファンで空気を通して加湿する方式。
メリット 発熱しない。結露しにくい。消費電力が小さい。空気清浄能力がある。
デメリット 雑菌が繁殖しやすい。加湿性能が弱い。
加熱気化式
原理 気温が低いときにはフィルターに含んだ水分に温風をあてる加熱加湿をし、湿度が安定してきたらヒーターレスの気化式となる方式。
メリット 比較的省エネ。吹き出し口が熱くならない。
デメリット 結露しやすい。
加湿器選びのポイント
- 熱のでない安全なもの
- 音のしない静かなもの
- 加湿しすぎないもの(気化式以外では、湿度センサーが必須)
- ランニングコストの安いもの
- メンテナンスの容易なもの
- 清潔なもの
全部を満たすものはない。だからこのポイントをよく理解した上で順位を付けてからカタログを見れば、ベストな加湿器選びができる。
一般的には、
- 使用時間が短時間、あるいは急速に加湿したいなら加熱式
- 長時間使う、省エネも気にするが高い加湿能力も必要なら加熱気化式
- 長時間使う、子供やペットがいるので安全性重視、コスト重視なら気化式ということになる。
加湿器は日本電機工業会によって、「定格加湿能力」(mL/h)に応じて「摘要床面積」が定められている。
使用場所よりも小さい出力の物を選んだ場合は当然期待される効果は得られないが、出力の大きなもので湿度センサーのない機種を選ぶと加湿しすぎる恐れもある。
ただし、センサーのないものでも気化式の場合は最大湿度は自然の原理にゆだねているのでその心配はない。
タンク容量も重要なポイントだ。タンクが大きければ大きいほど給水の手間がないわけだが、その分本体が大きくなってしまう。置く場所、しまう場所を考えた上で、なるべく大きなタンクを持つ物を選んだ方が無難だろう。
使用する水
巷間色々と言われているが、ほとんどの製品は水道水をそのまま使用することを前提としている。
つまり、井戸水やミネラルウォーター、精製水、浄水器の水は前提としていないのである。
理由は簡単で、消毒していない水は雑菌が繁殖するから。
これと、加湿方式による特性を踏まえた上で、次のことが言える。
- 井戸水しか無い場合は、加湿器用の除菌剤を使用する。除菌剤を使用しない場合は毎日洗浄する。
- アロマウォーターなどを使う場合は超音波式を使用し、毎日洗浄する。
加熱式の場合、例え雑菌が繁殖しても水蒸気で加湿するタイプなので、どんな水でも問題は無い。
但し、水道水を使用した場合、カルキが大変残りやすく、メンテナンスが面倒というデメリットがあり、その点では成分が残りにくい精製水を使用するという選択肢はある。
気化式の場合、噴霧するものは加熱式と同じく気体なので、やはりどんな水でも問題は無い。
ただ、本体の中は雑菌だらけになるので、水道水を使うことが望ましい。
加熱気化の場合、噴霧するものは加熱式や気化式と同じく気体なので、やはりどんな水でも問題は無い。
また熱風を使うので、気化式と比べて雑菌は繁殖しにくいので、精製水を使うメリットはあるだろう。
超音波式の場合、水を霧状に噴霧してしまうため、水道水以外の雑菌が繁殖しやすい水は使用してはならない。どうしても使用する場合は、除菌剤を使うか、毎日洗浄する必要がある。
ミネラルウォーターや精製水は、コスト的にも割に合わないだろう。日常的に安価に手に入れられるような状況で無い限りは、水道水で良いだろう。
メンテナンスを甘く見るな
加湿器を使う上で最も重要な点は、メンテナンスである。
メンテナンスをしないで使って良い家電製品など存在しないが、水を使用するものは特に頻繁なメンテナンスが必須である。
加湿器は空間に水分を捲くものであり、メンテナンスをしない場合や、誤った使い方をする場合は、有害物質をまき散らして健康被害を起こしてしまう。
「家電のメンテナンスなんて面倒」なんて言う人は、加湿器は使わない方が良い。
やかんで湯を沸かすか、濡れタオルに扇風機の風を当てていれば事足りるはずだ。
どんな加湿方式であれ、1日に1度はタンクを空にして洗った方が良い。
また、週に1度はフィルターや加湿器そのものを洗った方が良い。
超音波式であれば、毎日洗うべきだ。
空間除菌
最近、ウイルス対策として「空間除菌」という言葉がもてはやされており、そのような効果を謳う商品は多い。
基本的には超音波式加湿器と次亜塩素酸水という組み合わせが多いようだ。
官公庁は注意を促している。
私見だが、ウイルスに効果があるようなものを空間に散布することは危険だし、人体に被害が無いと謳っているものはウイルスにも効果が無いとみるのが妥当だろう。
加湿器以外の加湿機能付機器
加湿空気清浄機や加湿機能のついた家庭用エアコンと言うものも存在する。
空気清浄機の加湿方式は気化式と加熱気化式がほとんど。メリット・デメリットも加湿器と変わらない。
面白いのは家庭用エアコンの方で、給水を必要としない独自の方式なのだ。
簡単に言うと、室外機から外気を取り込んで、含まれる水分を室内に放出しているのだ。これは外気の湿度がそれなりにないと効果がないので、十分な加湿能力を求めたいのであれば別途加湿器を用意した方が良いだろうが、室内が極端な乾燥状態に陥ることはないという点ではメリットは大きい。
最後に
元々の記事「家電製品の選び方 1 加湿器」を書いたのは2013年10月28日である。加湿器の置かれた状況は変わってきたし、何よりコロナ禍でウイルス対策としての加湿器が注目されるに至った。
そんな中で、間違った認識で加湿器を使用することの危険性について、元記事ではほとんど考慮しなかったため、改めて書き換えたものである。
我が家では加熱気化式の加湿器が2台、気化式の加湿器、気化式の加湿機能を持った空気清浄機、加熱式の加湿機能を持った空気清浄機がそれぞれ1台ある。また、加湿機能付きのエアコンも使用している。
加熱式加湿機能のある空気清浄機は寝室に置いてあるが、どうしても結露が起こってしまうため、その対策として窓の結露防止用にヒーターを使っている。
また、ピュアメーカーという精製水メーカーを導入したので、今シーズンから加熱式及び加熱気化式に精製水を使用することにした。
元々の記事では加熱式を論外としたけれど、吹き出し口が熱くなると言う欠点を踏まえて使う分には何も問題が無いわけで、そういう意味では元記事は主観が入りすぎていたと反省している。
加湿方式を理解していれば、そのメリット・デメリットは分かるはずだ。それを踏まえて、各自が判断すれば良いだけだ。
適切な加湿器を選んで快適な生活を。