バリアフリー
「Suica(スイカ)」や「PASMO(パスモ)」などICカード乗車券専用の自動改札機の導入が鉄道各社で進む中、視覚障害者の間から不満の声が出ている。
視覚障害者は改札機が表示する残高が見えないことなどから切符を使う人も多いが、ICカードと切符の両方が使える従来型「併用機」と、ICカード「専用機」との区別がつかず、専用機の前で立ち往生してしまうという。
専用機の配置場所は駅ごとに異なっており、識者から「配置する際のルールを考えるべきだ」との指摘が出ている。
2001年に導入が始まったICカード乗車券は、カードをかざすだけで改札機を通過でき、切符を買う手間が省けるため、急速に普及が進んだ。鉄道会社での利用率は約7割に達する。
当初は、ICカードと切符などが両方使える併用機だけだったが、ICカードが普及したため、JR東日本の場合、2005年2月に新宿駅で初めて専用機を正式導入。昨年3月末時点で、専用機は同社の駅の自動改札機の1割強にあたる494か所を占める。首都圏の私鉄9社でも導入が進み、最も多い東急電鉄の場合、4割近い274か所が専用機となっているという。
専用機は、切符などを内部に取り込んで読み取る併用機より故障が少なく、鉄道会社にとっても維持費削減のメリットがある。
こうした中、東京視覚障害者協会(東京)は昨年10月、JR東日本に改善を求める要請書を提出した。同協会によると、視覚障害者はICカード乗車券を使う人もいるが、改札機の残高表示が見えず、接触不良や残高不足でブザーが鳴った時に混乱するため、慣れた切符の方を使う人も多い。しかし、改札機にじかに触れるまで専用機か従来機かの区別がつかず、切符で専用機を通過しようとして立ち往生するケースが相次いでいるという。
同協会では「専用機は廃止してほしい。廃止できないなら、どれが専用機か分かるようにして」と要望。これまでJR東日本は障害者に対し有人改札口の利用を勧めてきたが、これについても協会側は「問い合わせの客で込み合って長時間待たされることも多い」とし、「自動改札で戸惑っている時に後ろの客から舌打ちされてつらい思いをしてきた。便利さの陰に隠れがちな障害者のことも忘れないで」と訴えている。
これに対し、JR東日本では「構造上の理由などで駅ごとに専用機の配置が異なる。安全上の問題も含めさらに対応を検討したい」としている。東急では、点字ブロックで併用機に誘導する対応をとっている。
自身も盲ろう者の福島智・東大教授(バリアフリー論)は「各社や駅ごとに専用機の配置がバラバラで、『併用機は必ず端に残す』などのルールもない。障害者団体の意見を聞くなどして統一すべきだった。各社には、専用機近くでアナウンスを流したりする工夫が求められる」と指摘している。
(2009年1月9日15時39分 読売新聞)
障害者に対して配慮が足りないというのは、決して褒められることじゃない。だからJRも、福島教授が言うとおり、導入の際にルールを決めておくべきだった。
しかしながら、障害者団体の言う「専用機は廃止してほしい。廃止できないなら、どれが専用機か分かるようにして」と言う要望は、全く聞く必要がない。
なぜならば、鉄道会社は公共性が高いとは言え慈善事業ではないからだ。
そもそも自動改札導入の際に、文句を付けてきたのも障害者団体である。
切符の投入位置がわかりにくいと。
ならば、切符投入しなくても良いICカードは、今まで以上に便利ではないか。
「接触不良や残高不足でブザーが鳴った時に混乱するため」とあるが、モバイルSuica使用の僕は、今まで一度も接触不良になったことはない。
ICカード分厚い財布なんかに入れておくと読み取りエラーが多くなるのだから、読み取りやすいケースに入れて持ち歩くべきだ。
残高に不安があれば、オートチャージを申し込むという手もある。
もちろん、多くの利用者のことを考えるのであれば、JRは障害者のことを忘れてはいけない。障害者に使いやすいサービスは、健常者にも使いやすいのだ。
点字ブロックや音声案内での誘導、専用機の配置の統一は、今からでも出来ることだ。
朝のラッシュ時の新宿駅の改札など、列に並んだ段階では専用機なのか従来型なのか健常者でも分らない。直前になってはじめて気づかされる。
障害者が識別できるようになれば、健常者だって識別できるだろう。
これは多くの人にとって便利だ。
オートチャージはクレジットカードを持っていないと使えない機能だが、JR東日本はクレジットカード発行会社なのだから、もっと工夫できるだろう。
与信枠が極端に少ないカードであれば、信用度が低い人にも発行できる。しかも鉄道専用にすればリスクも少ない。
お互いの歩み寄りが必要だ。