遮光カーテン
遮光カーテン:車に設置禁止求め 事故の遺族ら国に要望へ
名古屋市熱田区で3月、母子3人がトラックにはねられ死傷した事故で、5歳の長男を失った父親らが事故原因の一つとされた車用カーテンについて、法令で設置禁止を求める要望書を今月中にも国土交通省に提出する。遮光カーテンを閉めての走行は道路交通法違反(乗車積載方法違反)にあたるが、設置自体は禁止されておらず、運転手は助手席側のカーテンを閉めた状態で交差点を左折し、母子をはねた。父親らは「すぐにでも規制を」と訴えている。【飯田和樹】
要望書を提出するのは、死亡した保育園児、一平君の父で介護士の古橋学さん(37)=名古屋市天白区=と全国交通事故遺族の会会員の佐藤清志さん(44)=東京都品川区。
車用の遮光カーテンは本来、運転手が仮眠する時などに使う。だが、3月17日に発生した事故で自動車運転過失致死傷罪に問われた元運転手、浜伸明被告(33)の公判で、検察側は浜被告が普段から、車外からのぞかれないための目隠し目的でカーテンを閉めて運転していたと指摘、禁固4年を求刑した。判決は15日、名古屋地裁で言い渡される。
古橋さんは事故後、遺族の会で事故防止に取り組む部会に所属する佐藤さんと出会った。03年5月、佐藤さんの長女(当時6歳)は交差点で左折してきたトラックにはねられ死亡。窓ガラスのスモークフィルムが事故原因の一つだったことから、同様に運転手の視界を狭めるカーテンの規制を以前から国交省などに求めていた。
国交省は今夏、運転手の視界確保を狙いとした道路運送車両法改正の検討を始めたが、カーテンの設置禁止には踏み込まない方針という。古橋さんらは「カーテン設置を認めていれば、走行中に使われる恐れが常にある」と訴えている。
なくなった方の遺族が車の遮光カーテンを規制して欲しいという気持ちはよくわかる。
だが、残念なことに同意はできない。
トラックに遮光カーテンを取り付ける目的は、運転手が仮眠中に覗かれないようにするためのものであり、本来は運転中に閉めるものではない。
運転中に閉めるのは、それこそモラルの問題と言うことになる。
「カーテン設置を認めていれば、走行中に使われる恐れが常にある」
極論だがこれは「ナイフの販売を認めていれば、殺人に使われる可能性が常にある」というのと本質的には何ら変わりがない。
政府が行うべきはモラル・ハザードの状態にならないように啓発活動と取り締まりを行うことであって、カーテンを禁止することではない。
人の命に危険がある可能性のあるものはすべて禁止、というのは社会のあるべき姿ではない。
社会生活というのは安全であることが望ましいが、100%危険のない世の中など存在しない。
欲望や利便性と引き替えに、ある程度の危険を容認しているのが社会なのだ。
私は命を軽視するつもりはないが、犠牲者が出るのはやむを得ないと考える。
もちろんそれを放っておいて良いはずはなく、より安全な社会にあるように努力をしなければならない。
カーテンのことだけ取り上げれば、走行中は絶対にオンにならない遮光システムを開発すればよい。
新たな法律なんかで禁止する必要はなく、行政が行うべきは危険なトラックを積極的に取り締まることだけだ。
この問題のもっと本質的な原因は別のところにある。
安い運賃で短い納期を要求され、高速は高いからと一般道を深夜長距離走る状況は、確実に人間に無理を強いているトラック業界の現状だ。
法による規制の強化を望むのであれば、カーテンの禁止ではなく、トラック運転手の待遇改善をすべきなのだ。