企業の論理
日教組会場問題:教研・全体集会を中止、史上初 ホテル、拒否崩さず
日本教職員組合(日教組)は1日、東京都港区のグランドプリンスホテル新高輪で2日から予定していた「教育研究全国集会」(教研集会)の全体集会の中止を発表した。右翼団体の妨害を理由にホテルが開催を拒否したため。教研集会は1951年に始まり、全国各地で毎年1回開催されているが、全体集会の中止は初めて。
全体集会で民間ホテルの会場使用を予定したのも初めてだが、ホテル側が昨年、契約解除通知してきたことから、日教組側が仮処分を申し立てており、東京高裁が会場使用を認めた判断をしている。集会の約30ある分科会は、ほかの十数カ所の施設で4日まで予定通り開く。
日教組によると、昨年3月、イベント会社を通じて会場使用を申し込み、妨害行動が予想されることも説明。5月にホテルと契約したが、11月に契約解除通知が届いた。日教組は契約解除の無効を求めて東京地裁に仮処分を申請。東京地裁は使用を認め、東京高裁も先月30日「ホテルが警察と十分な打ち合わせをすれば混乱は防止できる」とホテル側の抗告を棄却した。
日教組は1日、再度、ホテル側に使用を求めたが、「既にほかの予約が入っている」と拒否された。全体集会は2000人規模で、格差を断ち切る教育を求める基調報告などを行う予定だった。
記者会見で森越康雄委員長は「ホテルは企業の論理を司法より優先させた。悔しい」と述べた。近くホテルに損害賠償を求め提訴する意向を示した。
ホテルは「客の安全安心をモットーとしており、150台もの街宣車が来る集会は開けない。裁判所の判断は重大だと受け止めているが、契約解約は有効で法令違反と思わない」と話している。
日教組によると、これまで4回、会場側の使用拒否で裁判になったが、いずれも日教組の言い分が認められ、中止になったことはなかった。【山本紀子】
◇社会おかしい兆候??奥平康弘・東京大学名誉教授(憲法学)の話
戦後「集会の自由」と言いながら「開催場所の確保」が課題となってきたが、公的施設であれ私的施設であれ、徐々に市民の側の権利が守られるべきだという考え方が確立してきた。今回、会場使用を認める裁判所の判断があるにもかかわらず、ホテル側が「公的秩序」を前面に出した対応をするのは、社会がおかしくなってきた兆候だ。
毎日新聞 2008年2月2日 東京朝刊
僕が日教組に対して好意を抱いているか嫌悪しているかにかかわらず、宿泊するホテルに、同日程で日教組の集会があると事前にわかったら、ホテルを変えるだろう。
「ホテルは企業の論理を司法より優先させた。悔しい」というが、ホテルが企業である以上、当然といえる。
受け入れを拒否して社会的に大きなバッシングを受けることのほうが、日教組に損害賠償を払うより高いと判断したら、こういった判断にはならないだろう。
たとえばあるメーカーが、欠陥製品を出荷し、全面回収修理に100億円かかるとしよう。あるいはそれを放置し、けが人や死人が出て、それに対する損害賠償や、評判が落ちることによる売り上げ減があわせて50億だとしたら、人の死を選ぶことが企業の論理である。
これはもちろん、モラルに反する。
企業がモラルに反することを行った場合、モラル違反しなかった場合のほうが損害が少ないことが多い。
現実には死人・けが人が出る選択よりも、出ない選択のほうが損害が少なく、上記の例のような場合は本来は想定できず、損害金額の算出が間違っている。
とはいえ、たとえモラルに反する選択でも、その選択をすることによるリスクをきちんと織り込んで、それでも尚そちらのほうが損害が少ないのなら、それを選択するのが企業である。
今回の場合、一般社会的には日教組は過激な悪者であり、そういった団体と争いになっても、風評には問題がないと思われる。
それに、損害賠償といっても、今回の集会は営利行為ではないため、金銭的な損害はほとんどないだろう。
そういったもろもろのことを織り込んで、裁判所の命令に反するほうが、損害が少ないと踏んだのであろう。
ところで、日教組は「市民の側」の団体なのか?
かなり違和感がある。