ヤング シャーロック ホームズ 対決モリアーティ教授
私の批評というのは、本も映画も総じて甘口だと思っているが、ことホームズものの話しとなると、シャーロッキアンとして辛口にならざるを得ない。
今回見たこのDVDも、やはり辛口になってしまった。
まずは肯定的な部分。
登場人物たちが若いこと。
「緋色の研究」で初登場するホームズの推定年齢は30歳前後、ワトスンはやや年上というところ。
これを踏まえると、今まで映像化されているものは総じて年齢が高すぎる。特にワトスンの年齢が。そういう意味でジェームズ・ダーシー(シャーロック・ホームズ)もロジャー・モーリッジ(ワトスン)も、相応に若くて、新鮮である。
ストーリーも、手が込んでいるし、現代的で楽しめる。たいしたどんでん返しもないし、頭脳戦もないが、息をもつかせぬリズム感は、みる者を飽きさせない。
しかしながら、原作からの改編はいただけない。軍医ワトスンは検死医になっているし、ホームズは鉄砲でバンバン人を撃つし、社交的で、女にだらしなく、服装も几帳面とはいえない。レストレードはどう見ても小男ではない。
ストーリーの面でも、モリアーティ教授が犯人なのは結構だが、それに見合うだけの頭脳戦が構成されていない。あれでは教授ではなくただの悪党だ。
映像は総じて美しいが、検死や薬物注射のシーンが多く、かなりグロい。
ま、ホームズものとしてはいまいちなので、☆☆★★★ということで。
ちなみに、私がホームズもので評価できる作品があるとすると、それはきっと
1.原作を逸脱しない
2.時代考証を逸脱しない
3.それでありながら、新しい視点を取り込んでいる
ということになろうか。
だからホームズとワトスンはほとんどの物語で30代から40代だし、年齢がいくつであろうとも、服装は紳士でなければならない。だから、鹿打帽はそれ相応のときにしか被らない。
ロンドンの大気は汚染され、霧は黄色い。道端は馬糞だらけで、乾燥した馬糞が粉状になって埃っぽい。ホームズは、タバコはもちろんコカインもやるし、ワトスンは間抜けではなく常識人だ。警察も情報収集能力は優れている。
映像はロンドンでは全般的に暗く、田舎は明るい色調。
だれか、こんなホームズ物を撮ってくれ。