くもとちゅうりっぷ
1943年の映画。
日本のアニメーションの父と呼ばれる政岡憲三の代表作。
日本初のフルセルアニメーション。
16分の作品だが、2万枚以上のセル画が使われた。
童話をベースにしたミュージカルで、てんとう虫の声は童謡歌手の杉山美子、クモの声はオペラ歌手の村尾護郎がプレスコ方式であてている。
なんと言っても凄いのが叙情的な映像美。
キャラクターの動きもさることながら、背景となる木や花がリアルで美しい。写真ではないのかと思えるほどなのだが、フルセルアニメーションだというから違うのだろう。
モノクロ作品であるにもかかわらず、諧調を綺麗に出すためにセル画自体には彩色が施されていたという。
当時はセルが貴重品であったため、洗い流して再利用したという。もしも再利用せずに残っていたら、カラーで再撮影したものが観られたのかもしれないと思うと残念である。
内容は今見れば確かに古くはあるのだが、戦時中にこれだけのものが制作できたと言うことは驚くべきことだし、映像美という点では現代観点から観ても圧倒される物がある。
また戦時下であるにもかかわらず、プロパガンダとは無縁である事も素晴らしい。
☆☆☆☆★